インスリン抵抗性というのは、インスリンと呼ばれるホルモンが分泌されているにも関わらず、十分に作用しない状態を指します。
簡単に言えば、インスリンの効き具合が悪いということです。
インスリン抵抗性である場合、血糖値が上昇したままになり正常値に保つことができないため、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病のリスクを高めると考えられています。
ここ最近では、インスリン抵抗性が不妊症の原因に繋がると考えられるようになってきました。
今回はインスリン抵抗性についてお伝えして、さらに不妊に関わるといわれている要因を紐解いていこうと思います。
では、順に説明していきましょう。
まずは、インスリンを含むあらゆるホルモンについて簡単にお話しします。
ホルモンとは、体内のさまざまな内分泌器官で合成される化学物質を指します。 必要になると血中に分泌され、血液を介して体内を循環し、標的の細胞や器官に情報を伝えて正常に作用させる役割を持ちます。
代謝や神経伝達、細胞の分化など様々な働きを正常に行うために必要な情報で、生きていくためになくてはならない物質です。
ではインスリンはどこで合成、分泌をされ、どのような役割を持って作用しているのでしょうか・・・?
インスリンの合成や分泌は膵臓に位置するランゲルハンス島(膵島)のβ細胞で行われます。

膵臓は胃の裏側に位置する長さ15~20㎝ほどの消化器官で、主な役割は外分泌線と内分泌腺の2つです。
外分泌腺は、膵臓の体積の90%以上を占めており、膵液と呼ばれるアルカリ性の強力な消化液を十二指腸内に分泌しています。
三大栄養素である糖質、タンパク質、脂質の全てを消化することが可能なため、食後に多く分泌されます。
内分泌腺は、いくつかのホルモンを分泌しており、分泌部分をランゲルハンス島と呼びます。
"ランゲルハンス島"は、ドイツの病理学者のパウル・ランゲルハンスによって発見され、海に浮いた島のような形状で散在していることからその名が付けられたといわれています。
ランゲルハンス島は、魚類を除いた多くの脊椎動物では膵臓内に、魚類では肝臓付近に散在しています。
ヒトの膵臓内では、1㎎に対し10~20個のランゲルハンス島が含まれており、膵臓全体では100万個以上存在しているといわれています。
このランゲルハンス島には、α細胞、β細胞、δ細胞、e細胞、PP細胞の5つの細胞が存在しており、α細胞ではグルカゴン、β細胞ではインスリン、δ細胞ではソマトスタチン、e細胞ではグレリン、PP細胞では膵ポリペプチドというホルモンをそれぞれ分泌しています。

インスリンの合成や分泌はβ細胞で行われるのですが、ランゲルハンス島の50~70%を占めており、私たちの身体の中でインスリンの合成と分泌を行う唯一の細胞です。
インスリンを含むすべてのホルモンは化学構造の違いから、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン、アミン型ホルモンなどに分けられ、構成の仕方や受容体の位置、ホルモンの伝達の速さや持続性などそれぞれ大きく異なります。

インスリンは、ペプチドホルモンの一種に属します。
※ペプチドホルモン…バゾプレシン、オキシトシン、成長ホルモン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンなども属す
ペプチドホルモンは、3~200以上のアミノ酸で結合され、それぞれ大小さまざまな形をしています。
インスリンは、21アミノ酸残基のA鎖と30アミノ酸残基のB鎖の2つの鎖がジスルフィド結合し、51アミノ酸より構成されています。
インスリンができるまでにはいくつもの工程を挟みます。
まず前駆物質であるプレプロインスリンを粗面小胞体にて生成します。
粗面小胞体とはタンパク質の合成や輸送をする上でとても重要な働きを担う細胞小器官のことです。
小胞体の膜にリボソームと呼ばれる粒子状の構造体を持っており、このリボソームで遺伝情報の読み取りやアミノ酸の結合を行っています。
粗面小胞体にて生成されたプレプロインスリンは、プレ部分がシグナルペプチドとして小胞体の膜を通過するために先導的な役割を持つと考えられています。
そして、小胞体を通過する際にタンパク質分解酵素によってプレ部分が切断され、プロインスリンに変換されます。
こうして変換されたプロインスリンは、ゴルジ体(ゴルジ装置)へと運ばれていきます。
ゴルジ体は、細胞の中からタンパク質を加工して必要な場所に送る役割があります。
分かりやすく例えるなら、加工工場や配送センターのような場所でしょうか。
様々な物質がゴルジ体で適切な形に修飾、切断され細胞外へと分泌されていきます。
細胞内の特定のタンパク質分解酵素(エンドペプチターゼ)がプロインスリンを分割することで、成熟したインスリンは血液に分泌されていくのです。
この長い過程を経て、ようやくインスリンが完成しました…
作られたインスリンは細胞で作用するまでにも、さまざまな工程を挟んでいきます。

インスリンが属しているペプチドホルモンは親水性(水溶性)のホルモンなので、私たちの身体の細胞すべてに存在する脂質二重層を自由に通して拡散し作用することはできません。
つまり、インスリンは細胞内に簡単に入ることはできないということです。
そのためホルモンからの情報を受けとる際に受容体(レセプター)が細胞表面の膜に存在します。
インスリンの受容体はチロシンキナーゼ受容体の一種で、ホルモンや細胞などの成長や分裂を促す成長因子に対する細胞表面受容体です。
ちなみにアミン型ホルモンも同様に細胞表面の細胞膜に受容体を持っています。
※アミン型ホルモン…セロトニン、ドパミン、アドレナリン、メラトニンなどのホルモンが属す
インスリンがきちんと受容体と結合し作用することによって、細胞内へのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成酵素の活性化、糖質代謝やタンパク質、脂質の合成や分解に作用するなどさまざまな働きが開始していきます。
インスリンの合成や分泌不足だけでなく、インスリン受容体と結合しなければ、正常に作用することができず、インスリンの持つ作用に支障をきたすのです。
ここまでインスリンの合成から作用の仕方までお伝えしてきました。
次は、インスリンの働きを細かく見ていきましょう。
インスリンはさまざまな働きをしていますが、どれもとても大切です。
特に重要といえるのは、骨格筋、肝臓、脂肪細胞などに対し作用し、グルコース吸収を促し、上昇した血糖値を低下させ一定に保つ働きです。

血糖値とは血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度のことで、正常な人では空腹時の血糖値は約60~110mg/dl程度といわれています。
健康な人間の場合では、糖質1gでおよそ1mg/dlの血糖値が上昇し、食後では約100~140㎎/dlとなります。
ご飯を食べ血糖値が正常値を上回るとインスリンが分泌され、血液中からグルコースを取り込み、血糖値を低下させていきます。
食後約2時間以内に正常値まで低下させるという重要な役割です。
ちなみに角砂糖1個4g、4㎎血糖値を上げることになります。 ご飯1膳66gの糖質、8枚切りの食パン1枚20gの糖質、パスタ1人前70gの糖質があります。 つまりご飯1膳66㎎、食パン1枚20㎎、パスタ1人前70㎎の血糖値をあげるということです。 確実に血糖値を上げ、インスリンの分泌が行われます。
下記に食品の糖質量をご紹介します。

筋肉では、グルコースを取り込むことによって、血糖コントロールやグリコーゲンとして貯蔵を行っています。
筋肉を使用した分、グルコースをエネルギーとして使用し代謝しているのです。
加齢や運動不足によって筋肉量が減少すると、筋肉ではグルコースを取り込む量が減少し、インスリン抵抗性を引き起こす原因になります。
失ってしまった筋肉を元に戻すためには約3倍以上の時間がかかるといわれています。
適度な運動は常に心掛けておきましょう。
肝臓では、グルコースの取り込み、糖新生が行われます。
糖新生というのは、絶食時に乳酸やアミノ酸などからグルコースを産生する働きです。

糖新生の働きによって1日に最大で150gの糖を作ることができるといわれています。
私たちの身体は毎日約130~150gの糖を必要としているといわれているので、アスリート選手のように過度に筋肉を使用するような運動をしない場合、糖質をわざわざ摂取しなくても糖新生による糖で1日のエネルギーを賄えてしまうのです。
インスリンの分泌により糖新生は抑制されるため、インスリンの分泌量が増加する摂食時には糖新生は行われません。
その代わりにインスリンの作用によって、グルコースを取り込み、グリコーゲンを合成し、貯蔵するまでを行っています。
例えば、アルコールの多飲や薬の服用などで肝機能が低下すると、インスリンからの作用に反応できず、グルコースの取り込みやグリコーゲンの合成ができなくなります。
日常的にアルコールや薬、過剰な糖質摂取や脂肪食には気をつけましょう。
なぜ血糖値を低下させなければいけないのか、ある生活習慣病と一緒にご説明していきます。
血糖値を低下することのできない病気として有名なのが糖尿病です。
インスリンの合成、分泌不足やインスリンの感受性低下で発病します。
糖尿病の名称は、高血糖によって血液中から溢れ出たグルコースが尿中に漏れ出ることに由来しています。
インスリンの合成、分泌や作用に異常が出ることで、血液中から細胞内にグルコースを取り込む事が出来なくなり、高血糖状態が持続するのです。
糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病の二種類があります。
1型糖尿病では、何らかの原因によって自身の体内のリンパ球がランゲルハンス島のβ細胞を破壊してしまいます。
β細胞が破壊されると、インスリンの生成を行えなくなってしまい、血液中のグルコースを体内に取り込むことが不可能になります。
多くは10代で発病し一般的な糖尿病の症状だけでなく、重篤な糖尿病性ケトアシドーシスを起こす危険性がある為、毎日数回のインスリン注射を続けるか、膵臓(膵島)移植を受ける以外に治療法がありません。
※糖尿病性ケトアシドーシス…意識障害、急性腹痛、褐色尿、嘔吐、クスマウル呼吸(深大で規則正しい呼吸)、脱水、電解質異常症etc
一方で2型糖尿病は糖尿病の中で約90%を占めており、遺伝的に糖尿病になりやすい体質であること(遺伝因子)のほかに、糖尿病を発症しやすい生活習慣を送っていること(環境因子)で発病します。
インスリンの合成、分泌不足や感受性の低下(つまりインスリン抵抗性の高い状態)が原因になるのですが、1型糖尿病と違い、生活習慣や食生活を改善するだけで、2型糖尿病の発病は遅れさせることが可能といわれています。
生活習慣病というだけあって、自分自身の私生活次第で予防できる病気ということです。
発病した際の2型糖尿病の治療方法は、まずは食事、運動療法を行い、必要であれば内服薬やインスリン注射が使用されます。
あるデータでは、糖尿病患者と健常な人では、男性で約10年、女性で約15年の余命の短縮がみられました。
寿命が短縮する要因としては、高血糖によりヒトの構成成分の約20%を占めるタンパク質が糖化反応を引き起こし、老化現象が進行することが原因ではないかと考えられています。
糖尿病患者では、特有の合併症があります。
どれも高血糖状態が続くことにより、細い血管や神経に影響を及ぼす病気です。
糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害の3つで3大合併症と呼ばれています。
糖尿病網膜症は最悪失明をする可能性のある病気です。
網膜は細かい血管が張り巡らされており、映像を映すスクリーンの役割を担っています。
高血糖によりこれらの血管が障害されることで糖尿病性網膜症が引き起こされます。
糖尿病による失明は珍しいものではなく、成人以降での失明の原因1位とされており、年間3000人もの方たちが防げたはずの失明をしています。
糖尿病腎症は、腎臓の働きが低下し血液中の老廃物が排出できなくなる病気です。
私たちの体内では、腎臓が血液中の余分な水分や老廃物を濾過して尿中に排出することで、血液をきれいな状態に保てています。
この働きは、細い血管の集合体である糸球体と呼ばれる部分で行われ、高血糖状態により糸球体内の細い血管が障害されることで糖尿病腎症を引き起こします。
血液をきれいな状態に保てなくなると、血液に不要な水分や老廃物が蓄積してしまい、放置すれば死に至ります。
そのため、透析療法という本来行われている腎臓の働きを人工的に行う治療法が必要になります。
透析療法を受けている患者は日本で約33万人と言われ、毎年約5千人ずつ増加し、それぞれ約4割を糖尿病腎症の方が占めています。
糖尿病神経障害は、全身に張り巡らされた神経に影響が出ることで、全身のあらゆる細胞でしびれや痛みなどの様々な症状が出る病気です。
手足のしびれや痛みは特に出やすい症状ですが、神経麻痺によって熱さや痛みに鈍感になることや胃腸の機能の低下、排尿コントロールの異常など、神経に関係した多くの症状が出ます。
神経も血管での障害が長く続いた場合に、手足が壊疽(細胞、組織が腐った状態)してしまい、切断をしなければならないことも少なくありません。
その他にも糖尿病に関係なく高血糖による合併症はとても多く、身体にもたらす影響力は計り知れません。
高血糖状態が持続していると、以下の疾患などに罹患しやすくなります。
・動脈硬化性の心筋梗塞や狭心症などの心疾患…血管の老化による
・脳梗塞や脳出血などの脳卒中…血管の老化による
・歩行困難や壊疽…下肢の動脈硬化による感覚麻痺
・高血圧…血液の粘度の上昇と血管の老化による、高インスリン血症による
※高インスリン血症…血糖値を低下させようと大量のインスリンが分泌され血液中のインスリン濃度が高まることによる交感神経を刺激するため、血管が収縮し高血圧を引き起こす
・脂質異常症…脂質代謝の異常による
※脂質異常症…LDL(悪玉)コレステロールの高値、中性脂肪の高値、HDL(善玉)コレステロールの低値の3タイプ
初期には血液検査などの数値でしか異常が出ないため、無症状のうちに全身の動脈を虫食み動脈硬化を進行させる疾患
・全身の血液循環が悪くなる…動脈硬化や高血圧、糖代謝異常による血液の粘度上昇
・骨粗鬆症…AGEsによる骨の老朽化
※インスリンは骨芽細胞に作用し骨の形成にも関与している
ほとんどインスリンの分泌されない1型糖尿病では、糖尿病でない人の6~7倍、2型糖尿病では1.5~2倍の骨折リスクが高い
・歯周病…感染症にかかりやすくなることによる
※歯周病…歯周病細菌(グラム陰性菌)の感染による
この細菌群は強力な内毒素を発生し、歯の周りに炎症を起こす疾患
・風邪やインフルエンザ、肺炎、結核、水虫etc…白血球や免疫に関わる細胞機能の低下で感染症にかかりやすくなることによる
※コロナウィルス…2020年に世界中で流行しパンデミックを引き起こしたコロナウィルスは、糖尿病患者の感染率は健常な人と変わらないとされている
しかし、糖尿病患者の方が重症化するリスクは高いことが報告されている
これらの高血糖による合併症は、血糖値をコントロールすることで予防、治療することができます。
血糖コントロールの仕方は高血糖状態によって出ている症状や重症度によってそれぞれです。
まずは食事、運動療法となります。
健康な人でも、糖尿病や高血糖になるリスクはあります。
予防をするためにも、取り返しがつかなくならないためにも、血糖コントロールは行いましょう。
血糖値を上昇させるホルモンは、グルカゴン、糖質コルチコイド、成長ホルモン、カテコールアミンと複数存在するのに対して、血糖値を低下させるホルモンは、インスリンのみです。
私たち人間を含む多くの動物で、血糖値上昇への反対作用が十分に備わっていないので、血糖値を急上昇させる糖度の高い糖質中心の食事は控えましょう。
ここまでは、インスリンが深く関わる糖尿病と一緒に高血糖のリスクをお伝えしてきました。
大切なことなので、細かくお伝えしておきたい物質があります。
高血糖によって生成される悪影響をもたらすAGEs(終末糖化物質)という物質で、体内を老化させてしまう原因になります。
実は、血管を老化させ動脈硬化や高血圧のリスクを高めているのもこの物質です。
今回のテーマでもある不妊症に一番関わる部分かもしれません。
体内のグルコースは私たちのエネルギー源にもなるため重要なのですが、高濃度のグルコースはタンパク質と糖化反応を引き起こします。
糖化反応した物質は、終末糖化産物とよばれるAGEsとなります。
高血糖だけが原因ではなく、加齢でもAGEsは生成されやすくなり、分解されにくい上に、体内のコラーゲンを多く含む皮膚や骨、関節や血管で蓄積しやすいことが分かっている厄介者です。
AGEsは身体にとって老化物質なので、それぞれ蓄積すると、肌の黄ばみやシワ、骨や関節可動域の低下、もろくなる…などの症状を引き起こします。
さて、このAGEsは身体中の細胞を老化させる原因ナンバーワンの物質といわれています。
女性は得に老化したくないものですよね…。
男女問わず、美容や健康の大敵であることはもちろん、妊活中、妊娠中に細胞の老化は大きく影響します。
卵子や精子も細胞で作られているからです。
実際に、体内のAGEsの蓄積量が多いほど、体外受精時の採卵数や受精卵数が低下するデータが存在し、妊娠する人に比べると着床しない人や妊娠継続できない人の方が、AGEsは多く蓄積しているといわれています。
多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)と呼ばれる疾患では、インスリン抵抗性の合併率が高いといわれています。
PCOSは不妊症で悩む多くの方に見られ、女性約20~30人に1人の割合の疾患です。
通常は、約2~3cm(親指第一関節分ほど)のサイズとされている卵巣で、毎周期1~2個の卵胞が20㎜を超え排卵します。
PCOSの場合、複数の卵胞が満員電車のように卵巣で渋滞してしまい、卵胞の発育が十分に行えず、自然に排卵することが難しいといわれています。
実際にPCOSで悩む多くの女性を見てきましたが、排卵誘発剤を服用してもなかなか育たない方もいらっしゃいます。
刺激量の強い注射を数週間にわたって打ち続け一気に10数個育ってしまい、20代にも関わらずタイミングをとることができずに、急遽体外受精にステップアップされる方もいらっしゃいました。
採卵が出来ても卵巣がパンパンに腫れてしまい、卵巣過剰刺激症候群になる方も少なくありません。
PCOSは卵胞の発育だけでなく妊娠中にも影響を与え、妊娠糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが高まることも分かっています。
その他にある記事で、培養した人の絨毛細胞にグルコース由来のAGEsを添加すると絨毛細胞が害を受けたと、というものがありました。
絨毛細胞というのは、その名の通り毛のように細い血管細胞で、妊娠中に形成される栄養膜細胞(別名:トロホブラスト)のことを指します。
妊娠16週までに母体と胎児の間には胎盤が形成されていきますが、絨毛細胞は母体と胎児を繋ぐ連絡路の役割を担います。
ガス交換や栄養供給を行う血液を運ぶ通り道となるため、とても重要なポジションです。
AGEsは血管を老化させ動脈硬化の原因となる恐れがある物質です。
通常の動脈よりも細い毛細血管で構成された絨毛細胞は、その他の血管以上に害を受けます。
つまり、AGEsによって絨毛細胞のような細い血管は害されやすく、血流が遮断されて酸素や栄養がうまく運べなくなる危険性があるのです。
妊娠中に流産するケースは約15%といわれ、妊娠を経験した女性の50%以上が経験したことがあるといわれています。
妊娠初期の胎児の心拍確認前が流産のうちの約70~80%以上を占め、妊娠期間中で最も流産する確率が高い時期です。
ほとんどが染色体異常による流産といわれていますが、その他感染症など原因は多岐にわたります。
この原因の一つに子宮内の血流が関係すると考えられています。
胎盤を形成する妊娠16週までは、特に絨毛細胞が新しく形成される時期なので、AGEsによって害されると着床や胎児の成長に関わります。
また、最近不妊治療を専門とするクリニックで不育症検査をするところが増えてきました。
中には不育症のみを専門的に調べるクリニックもあります。
不育症とは、妊娠をしても流産や死産を繰り返してしまい、出産まで至らない病状のことです。
この不育症の原因の中に血液凝固異常があげられています。
私たちの身体は、大量の出血をすると生きていけないため、緊急事態に備えて血液を固める働きを持つ物質が存在します。
これが血液凝固因子です。
出産の際には約500mlの出血を伴うため、妊娠すると非妊娠時より約6倍も血液が固まりやすくなります。 この凝固因子たちの過剰な働きは、子宮内の血流を悪くする可能性があるので、着床や妊娠継続を妨げる可能性があるとして考えられているのです。 場合によっては、血液をサラサラにする薬が処方されることもあります。
少し話が逸れてしまいました…。
何が言いたいかというと、血液をサラサラな状態に維持するために薬を服薬する人もいるのです。
妊活中に卵巣や子宮へホルモンや栄養を送るのは血液、妊娠中に母体と胎児の間でガス交換や栄養供給を行うのも血液です。
脳から卵巣や子宮などへホルモンの命令や栄養がうまく届かなければ、卵胞や子宮内膜の発育に支障が出ます。
妊娠中であれば、胎児の発育や妊娠維持能力にも関わります。
妊娠には血液の粘度を上げすぎないことは必須なのです。
AGEsは血管を老化させてしまうだけでなく、血液の粘度を上げてしまう物質でもあります。
血液が運ばれないとなると、さまざまな細胞で正常な働きを行うことが難しくなるので、卵胞の発育、受精、着床、受精卵の成長、胎盤の形成、妊娠率など…生殖機能において悪影響を及ぼす可能性が高いということです。
さて、この危険なAGEsを体内から減少させるには、まずAGEsの原因となるグルコースを血中から取り込むことが欠かせません。
グルコースの取り込みを行い血糖値の低下をさせる働きがあるホルモンは、インスリン一択です。
AGEsを体内に溜めずに代謝するには、インスリンの正常な働きが必要不可欠となるのです。
インスリン抵抗性を引き起こさない環境づくりはとても大切です。
インスリン抵抗性の原因として考えられることをいくつかあげてみます。
・糖質の摂取
・過食
・高脂肪食
・肥満(特に内臓肥満)
・高血圧
・脂質異常症
・運動不足による筋緊張
・デスクワークなどによる血流循環の悪化
・アルコールなどによる肝臓、膵臓の機能低下
・ストレス
・加齢
高度生殖医療は年々進歩し、不妊治療によって生まれる子供も増加しています。
今から約40年前、1978年にイギリスで初めて体外受精児が生まれ、5年ほど遅れて1983年に日本でも初めての体外受精児が生まれました。
また、1983年には凍結胚移植による妊娠、出産、1988年には顕微授精による妊娠、出産が成功し、不妊治療で新しい方法が確立されました。
高度生殖医療によって今日までの約40年以上の間に、900万人以上もの赤ちゃんが誕生しています。
約40年間で高度生殖医療が進歩しているのにもかかわらず、不妊症で悩む夫婦は増加しています。
約40年前の不妊症の原因とは違い、女性の社会進出化などによって妊娠を望む年齢が高齢化していることが関係すると考えられています。
しかし、年齢だけが原因ではありません。
便利になりすぎた現代では、食事ではインスタント、冷凍食品、コンビニ、出前配達と栄養が偏ったり、仕事では長時間のデスクワーク、スマホの見すぎによる睡眠不足など…現代特有の不健康な生活習慣も関与するといわれています。
インスリン抵抗性を引き起こす原因としてあげたものはどれも、糖質の過剰摂取やデスクワークによる血流の悪循環、運動不足など…不健康な生活習慣というのが関与しているように感じます。
こうして、インスリン抵抗性を引き起こした場合、結果的に糖代謝などが行えず細胞が糖化するため、老化が進行し不妊症の原因になります。
妊活をする上で、老化は大敵。
妊活を始める年齢が高齢化している今、細胞をこれ以上老化させないためにもインスリンの働きが十分に行われることはとても重要なのです。
インスリン抵抗性を改善する方法として、アクトスやメトホルミンという薬があります。
ただ、糖尿病患者などで服用される場合がほとんどで健常者では使用できません。
ご自身でできる血糖コントロールが重要になってくるのではないでしょうか。
積極的に糖質制限や適度な運動を心がけていけるといいですね。
まとめ~妊活に必要なこと~
・インスリン抵抗性にならないように生活習慣に注意すること
・糖化が起こらないように、糖の摂取を控えること
・血液粘度を上昇させないように、糖の摂取を控え、水分をしっかり飲むこと
・血行不良にならないように針やマッサージをする
※後述
・アクトス…2型糖尿病患者で服用される
インスリン抵抗性が推定される場合のみ
インスリン抵抗性の目安は、BMI 24以上もしくは、空腹時の血中インスリン値5μU/mL以上とする
胚、胎児の死亡率が高くなるため、妊娠中、妊娠可能性のある場合、服用しないこと
乳汁への移行がみられるため、授乳中は服用しないこと
・メトホルミン…2型糖尿病患者で服用される
筋肉での糖利用促進、肝臓での糖新生抑制を行う
催奇形の可能性があるため、妊娠中、妊娠可能性のある場合、服用しないこと
乳汁への移行がみられるため、授乳中は服用しないこと
何かございましたらご質問ください。
銀のすず